VPNとは:仕組み、守れる範囲、スマホのVPN設定、オン・オフの判断まで
先に結論:VPNは、自分の端末とVPN事業者のサーバーのあいだを暗号化した通り道でつなぎ、そこを経由してインターネットに出る仕組みです。途中のWi-Fiや回線からは通信の中身や接続先が見えにくくなり、接続先のサイトからはVPNサーバーから来た通信に見えます。その代わり、通信はVPN事業者のサーバーを通るので、事業者を信頼できることが前提になります。
仕組み
- VPNなし:自分の端末から、Wi-Fiや回線を通って、接続先のサイトへ直接つながります。Wi-Fiの運営者や回線事業者からは、どのサイトに接続しているかが分かる場合があります。接続先のサイトには、自分のIPアドレスが見えます。
- VPNあり:自分の端末とVPNサーバーのあいだが暗号化された通り道(トンネル)になります。Wi-Fiや回線事業者からは「VPNサーバーと通信している」ことは分かりますが、その先の接続先や中身は見えにくくなります。接続先のサイトからは、VPNサーバーのIPアドレスから来た通信に見えます。
「VPN」はVirtual Private Network(仮想の専用ネットワーク)の略です。もともとは、会社の拠点同士や、自宅から社内ネットワークに安全につなぐための技術として使われてきました。この記事で主に扱うのは、個人が月額や年額で契約する「VPNサービス」です。
守れる範囲
- 公共Wi-Fiなどで、同じネットワークの利用者や運営者から、通信内容や接続先を見えにくくする
- 接続先のサイトに、自分の本来のIPアドレスを知られにくくする
- 回線事業者から、どのサイトに接続しているかを見えにくくする
守れない範囲
- フィッシングサイトに入力した情報
- 端末に入ったウイルスや不正アプリ
- ログインしたサービスに自分から渡している情報(アカウントに紐づく閲覧履歴など)。GoogleやSNSにログインしていれば、VPNを使っても誰が見ているかはそのサービスに分かります。
- VPN事業者自身が見られる情報(そのため、ログの扱いが重要になります。ノーログとは)
VPNは「通信の経路」を守るもので、「何でも匿名になる道具」ではありません。
HTTPSとの違い
HTTPSは、ブラウザと接続先のサイトのあいだの通信を暗号化します。アドレスが https:// で始まるサイトなら、パスワードやページの中身は途中で読まれにくくなっています。
VPNは、端末とVPNサーバーのあいだの通信全体を暗号化します。HTTPSでは隠せない「どのサイトに接続しているか」や、HTTPSを使っていない古いアプリの通信も、VPNサーバーまでは見えにくくなります。両方は役割が違い、組み合わせて使えます。公共Wi-Fiでの必要性は公共Wi-FiでVPNは必要かで説明しています。
| HTTPS | VPN | |
|---|---|---|
| 暗号化する区間 | ブラウザ〜接続先のサイト | 端末〜VPNサーバー |
| 通信の中身 | 見えにくい | 見えにくい(VPNサーバーまで) |
| 接続先のサイト名 | 途中から分かる場合がある | 途中からは見えにくい |
| 接続先から見えるIPアドレス | 自分のもの | VPNサーバーのもの |
| 費用 | かからない(サイト側が対応) | 無料版もあるが、多くは有料 |
DNSとの関係
DNSは、サイトの名前(例:example.com)から接続先のIPアドレスを調べる仕組みです。VPNを使っていても、DNSの問い合わせがVPNを通らずに回線側に送られると、どのサイトを見ようとしているかが分かってしまいます。多くのVPNアプリは、DNSの問い合わせもVPN経由にする仕組みを用意しています。
スマホの「VPN」表示の意味
iPhoneやAndroidの画面上部に「VPN」の表示が出ているときは、何らかのVPN接続が有効になっています。自分でVPNアプリを入れた覚えがないのに表示される場合は、次のようなアプリがVPNの仕組みを使っていることがあります。
- セキュリティアプリ、広告ブロックアプリ、フィルタリング(子ども向けの閲覧制限)アプリ
- 通信を節約するアプリ、通信キャリアの安心・安全系のサービス
- 会社や学校から入れるように指示された管理アプリ
VPNの設定は、iPhoneなら「設定」→「一般」→「VPNとデバイス管理」、Androidなら「設定」→「ネットワークとインターネット」→「VPN」あたりで確認できます(機種やOSのバージョンで名前が少し違います)。覚えのないVPNが入っていて、どのアプリのものか分からない場合は、そのVPNを削除し、関連するアプリも見直してください。通信はそのVPNの運営者のサーバーを通るためです。
スマホでの設定や選び方はiPhoneで使うVPNとAndroidで使うVPNにまとめています。
VPNはオンにしておくべき?
常にオンにしておく必要はありません。次のような場面でオンにし、それ以外はオフでも困らない人が多いです。
| 場面 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| カフェ・駅・ホテルなどの公共Wi-Fi | オン | 同じWi-Fiの利用者や運営者から接続先などを見えにくくする |
| 海外旅行・出張 | 必要に応じてオン | 渡航先のWi-Fiを使う場面が多い。国によってはVPNの扱いに規制がある(海外旅行でのVPN) |
| 自宅のWi-Fi・モバイル回線 | どちらでもよい | 途中の経路を他人と共有していない。速度や電池を優先するならオフでよい |
| ネットバンキング・決済 | 状況による | VPN経由だと追加の本人確認が出たり、ログインできないことがある |
| オンラインゲーム・ビデオ通話 | オフが無難 | 経由する分、遅延が増えることがある |
オンにするとつながらないサイトやアプリがあるときは、そのときだけオフにするか、アプリごとにVPNを使うかを選べる機能(スプリットトンネル)があるサービスを選ぶ方法もあります。つながらないときの対処はVPNがつながらないとき、遅いときはVPNが遅いときを見てください。
会社のVPNとの違い
会社で「VPNにつないでから作業して」と言われるのは、自宅などから会社のネットワークに安全に入るための リモートアクセスVPN です。接続先は会社のネットワークで、会社が管理しています。
この記事で扱う個人向けのVPNサービスは、接続先がVPN事業者のサーバーで、そこからインターネットに出ます。仕組みは似ていますが、目的と管理している人が違います。会社のVPNの設定や不具合は、会社の情報システム担当に確認してください。
VPNを使うのは違法?
日本では、VPNを使うこと自体を一般に禁止する法律は見当たりません(当サイトは法律の専門家ではないため、個別の判断が必要な場合は専門家に相談してください)。ただし、次の点に注意が必要です。
- VPNを使っても、違法な行為が合法になるわけではありません。
- 動画配信サービスなどの利用規約で、VPNでの利用や、契約した国以外からの視聴が制限されていることがあります。
- 国によっては、VPNの利用や提供が規制されています(中国でのVPN)。
よくある質問
無料のVPNでもいい? 用途によっては使えます。ただし、通信がどこを通るかを任せることになるので、運営者と、データの扱いが確認できるものに限ってください(無料VPNの選び方、無料VPNのリスク)。
VPNを使うと遅くなる? 経由するサーバーの分だけ遠回りするので、遅くなることがあります。どのくらい遅くなるかは、回線・時間帯・接続先・端末で変わるため、当サイトでは速度のランキングは載せていません。
VPNを使えば完全に匿名になる? なりません。ログインしたサービスには誰かが分かりますし、VPN事業者はあなたの通信の経路を扱います。
何台まで使える? サービスによって違います。1契約で10台までのもの、台数の上限がないものなどがあります(VPNの比較)。
デメリットもある
VPNを使うと遅くなる、費用がかかる、つながらない場面がある、といったデメリットもあります。VPNのデメリットもあわせて読んでください。選び方はVPNの選び方にまとめています。